遊郭跡に泊まろう!行合町遊郭・別府市北部旅館街「旅館かおり」

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我々取材班は三度訪れた別府の地にいた。九州を代表する大温泉地、大分県別府市には今もあまたの宿と温泉街が点在し、やや寂れたとは言えども未だ観光客を惹きつけてやまない。数ある宿の中でどうしても気になって泊まらずにおれなかった所がある。別府駅北側にある「北部旅館街」の存在だ。

別府市 旅館かおり

北部旅館街は昔「行合町」と呼ばれた旧遊郭地で、戦後の売防法施行後、遊郭から旅館街に転業して現在まで細々と続いていた場所である。一泊1人2千円台から泊まれてしまう格安レトロ旅館の宝庫となっている場所だが、場末感が半端無く強く、一見の観光客はまず近寄る事すらないだろう。 今は「仲間通り」という名称がついている。

別府市 旅館かおり

今回最大の目的がこの北部旅館街にある「旅館かおり」への宿泊だった。昭和8(1933)年に建てられて築80年という素晴らしいビンテージ木造建築物件でもあるこの旅館、前身はもちろん妓楼で「貸席香織」という屋号で営業していた店舗だ。宿のご主人もご高齢で、いつ店を畳むか分からないとの事だったので不安が入り乱れながらの来訪となった。不安でしょうがなかったのは宿がボロいからという理由ではない。予約の電話を何度入れても全然応答しないんだもん。もうダメ元くらいのテンションで直接北部旅館街まで来てしまったが…実にあっけらかんと玄関口が開いてた。

別府市 旅館かおり

北部旅館街には遊郭時代からの年季が入った旅館が数軒営業しているが、その中でも「旅館かおり」のご立派でオンボロ具合は頭一つ抜きん出ている。一時期アートイベントで開放されていてデザイナーさんが一室を弄り倒していたようだが、それも終わり、果たして営業を続けておられるのかどうなのかと思って来たんだけど、まだまだご健在だったようだ。

別府市 旅館かおり

玄関口から宿主の爺さんを呼んで泊まりたい旨を伝えたのだが「本当に泊まるの?ウチよりも向かいの『ちとせ』さんの方が綺麗だからそっちの方がいい」だなんて途端に断られそうになる。とんでもない。我々は旅館かおりに泊りたいが為にわざわざ別府にまで足を運んだのだ。そこをどうにか、と懇願すると、2階の一室に通された。宿代は前金で1人2000円。安い。西成のドヤ並み価格だ。

別府市 北部旅館街

「旅館かおり」は一泊2000円で恐らく最安値だが、他にも「ちとせ」「すゞめ」「あおしま」など北部旅館街にある旅館は殆ど2500円か3000円といった所。駅前高等温泉もそうだが別府は安宿揃いで長期滞在者には心強い。

別府市 旅館かおり

ご主人は足を悪くされていて階段の登り降りも這うように手足を添えながらしか出来ないようで、なかなか宿を維持するのも楽ではないようだ。客室は全て2階にあり、建物内には年季の入った濃ゆい生活臭が漂っている。こっちの期待通りに妖怪屋敷のようだが、もはや掃除の手も行き届かないのかも知れない。一応ご家族の方々も住んでるみたいなんだけどね。

別府市 旅館かおり

通された部屋には既に布団が敷かれていて、やはり元遊郭だけに6畳間程度の必要最低限のスペースしかない。パイプハンガーには誰が着たかも分からない半纏が掛けられていて、つい昨日まで人が住んでいたかのような佇まい。まるで生活保護のご老人が暮らす終の棲家のようである。主人に一言「昨日の客が帰ってくるかも知れないからその時は呼んでくれ」と。え…何ともテキトーっぷりが素晴らしい。

別府市 旅館かおり

テレビ台の下には前の客が残していった漫画雑誌が大量にあり、布団の横にはコタツも置かれているが、ともかく全体的に部屋が臭い。長年の生活臭の蓄積であり、タバコのヤニや男の体臭や何やら諸々の生活臭がミックスした何とも形容しがたい臭いが絶えず鼻孔をくすぐる。これは本格的に人を選ぶ宿である。まあ当方は全く平気なんだけどね。

別府市 旅館かおり

一応表の看板に「冷暖房完備」の表示があったものの、いざ部屋に来ると一目見て使う気力が失せてしまいそうな年代物のエアコンとなっていました。西成のドヤでも2千円クラスならさすがにこれ程のクオリティのものはない。この日はまだ冬場で夜が冷えたので、最終的にはコタツに足を突っ込んで寝た。

別府市 旅館かおり

さすがにこんなマニアックな旅館に泊まっているのは我々だけかと最初は思っていたが、実はこの旅館かおりには客が何人か月額の家賃を支払い「住んでいる」とご主人は仰られていた。光熱費全部込みで6万。一泊2000円の計算なので、まあそうなるか。2階の洗面所やトイレが妙に生活感が強いのは居住者がいるからであると思うと納得。和式便器に洋式便座を後付けしたトイレはあまり掃除されてなくて、汚物がこびりついていた。

別府市 旅館かおり

風呂場は一階にあり、宿主の爺さんやご家族の居室となっている部屋に面した玄関から奥へ続く廊下を端っこまで行って入ることになる。脱衣所らしきものがあるにはあるが、扉は腰の高さだけ目隠しになっているだけで、誰か来たら丸見えな状態だった。

別府市 旅館かおり

浴室は2つあり、どちらも年季が入りまくりで壁やタイルの痛み具合が温泉の成分のキツさを物語っている。さすが別府という土地柄だけあってこんな場末の宿まで源泉かけ流し状態で、湯質は確かだ。奥の浴室の方が雰囲気あってボロくて素敵だったけど撮った写真をどこかに紛失してしまいお見せする事が出来ず残念。温泉は隣の旅館あおしまと共用になっており、あおしまの人が掃除しにやって来ていた。地元の常連が風呂だけ入りに来るそうだ。

別府市 旅館かおり

そんな浴室の勝手口から旅館の裏側を覗いてみるとこんな感じ。何というか凄い空間だ。別府という街がいかに底なしにDEEPなのか来る度に感心させられる。

別府市 旅館かおり

北部旅館街は戦後の一時期、別府に進駐軍がやってきた頃にパンパンガールが立ち並んでいた事もあったそうで、宿主の爺さんも80過ぎでたいがい高齢だが、宿の経営を先代から任される前の20代くらいの頃は遊女の姉ちゃんがスッポンポンで走り回ってるのを見た事があるとかどうとか、とにかくかつての行合町がヤバイ街だったのは違いないようだ。今は竹瓦温泉あたりがヤバいけどな。

別府市 旅館かおり

この日の夜は竹瓦温泉そばのヒットパレードクラブに行ったりして別府の濃密な時間を楽しんで帰った訳だが、あの辺にも充分徒歩圏内だし旅館には無料の駐車場(一台のみ)もあってリーズナブルな事は間違いない。ボロくても平気な方には思い出作りに是非「旅館かおり」での一泊をお勧めしたい。

旅館かおり

※予約電話は出ない可能性が高いので直接訪問の事
大分県別府市駅前本町10-33

大分県別府市駅前本町10-33


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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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